プラスチックベアリングにおける不具合
プラスチックベアリングを使用していて発生する不具合についてまとめました。
基本的にはプラスチックベアリングは金属製ベアリングと異なり、耐荷重性能や回転性能が大きく変わります。
金属製では受けられる荷重もプラスチック製では受けることができなかったり、金属製では耐えられる回転速度もプラスチック製では耐えられなかったりします。
- 参考記事「プラスチックベアリングのメリット・デメリット」
主な不具合
摩耗(擦り減り)
プラスチックが負荷や熱に耐えきれず擦り減ってしまう現象で、摩耗とも呼びます。
摩耗が大きくなるとベアリングの内部の隙間が大きくなり、ガタガタになります。
負荷に強い(あるいは回転性能の高い)材質に変えたり、荷重に耐えられる形状にしたりすることで解消できます。
摩耗(亀裂)
こちらも同じ摩耗にはなるのですが、表面にうろこ状の模様は見られる摩耗です。
これはPEEKなどの比較的硬い樹脂に生じる現象で、負荷により内部に亀裂が生じ、その亀裂が表面まで届くことで薄く剥離するような現象です。
荷重に耐えられる形状にするか、すべり軸受などを使用することで解消できます。
偏摩耗
通常は中央で回転するため均等に摩耗するのですが、このようにボールが片方によって摩耗してしまうことで生じる現象です。
主にスラスト荷重がかかることで偏摩耗が生じます。
プラスチック製ラジアルベアリングはスラスト荷重を受けられませんので、この場合はアンギュラベアリングやスラストベアリングとの組合せを推奨しています。
溶融
その名の通り、プラスチックが溶けてします現象です。
主な原因は回転スピードが速すぎることにより熱が発生し、プラスチックがその熱に耐えられなかったことです。
摺動性能の高い材質に変更することで解消できますが、耐荷重面も考慮する必要があります。
凝着摩耗
軌道輪とボールに同じ材質を使用してしまった際に生じる異常摩耗です。
ベアリングが回転することによって生じる摺動熱の影響で、ベアリング本体とボールがくっついたり離れたりを繰り返し、かえって摩耗を早めてしまいます。
ボールを異材質(プラスチックよりも硬度がある材質)に変更することで解消できます。
変形
熱などの温度による変形です。
プラスチックは温度による影響を受けやすく、温度が高くなったり低くなったりすることで変化します。(熱線膨張係数は金属に比べると1ケタ違います)
使用環境に適した耐熱をもつ材質を使用することである程度は解決できますが、どうしても経時変化に関しては、カバーしきれない部分もあります。
割れ
過度な負荷による割れも不具合の原因です。
基本的にプラスチックは弾性があり衝撃吸収してくれるため、よほどのことがない限り割れることはないのですが、比較的硬い材質においては局所的に力が加わることで生じる可能性があります。
直接的に負荷がかかるような構造を見直すことで解消できるケースが多いです。
打痕/凹み
こちらも局所的に負荷がかかった場合に生じる現象です。
プラスチックは力に弱いため、集中的に荷重のかかるとこのように凹みができてしまう可能性があります。
均等に力がかかるように使用していただければ、生じることはほとんどありません。
異物混入
砂やゴミ、スラッジなどもベアリングの回転を阻害する原因の1つです。
内部に入ってしまうとベアリングやボールを傷つけてしまうため、しっかりと対策する必要があります。
形状を変えることで対処できることが多いですが、プラスチックに限って言うと、硬い材質よりも柔らかい材質の方が適しているという特性もあります。
ボールの不具合
ボールの不具合も回転不良の原因となります。
下の写真のように、ボール自体が変形したり摩耗したりして割れてしまうことで、スムーズな回転を得られないということがあります。
条件や環境に応じた適切なボールを使用してあげてください。
以上がプラスチックベアリングにおける不具合一覧でした。
様々な対処法を取り揃えておりますので、お気軽にお問い合わせください。